はらだ先生にすっごくはまった話

BL作家のはらだ先生に猛烈にはまりました。

ひと月で単行本はほとんど購入。作者ご本人制作の同人誌も。漫画をこんなに買ったのは、『20世紀少年』以来です。

 

もともと漫画サイトで、2、3年ほど前に『にいちゃん』を読んでいました。

きっかけは、たしか広告で見かけて、絵が好きだなあと思ったから。

BLは私、中学生で卒業していたので(自慢じゃないけどBLがこんなに流行るずっと前に嗜んでおりました。当時一般の子がメールマガジンで小説を配信できるサービスがあってだね……私は好きだった男子アイドルの、夢小説ではなく、やおい小説を読んでいた……でもほんと、そういうところに驚くほど文章と構成力の巧い子がいたものです)、

BLだから読んだのではなく、むしろかなり久しぶりで、でも内容が内容なのでBLであること以前にその重たい表現に衝撃を受けた作品でした。

子どものときに近所のにいちゃんからいたずらされた主人公が、高校生になってそのにいちゃんを探しに行き、再会したときにはにいちゃんは自意識と罪悪感の狭間で思い詰めて病みきっていて……という出だしの話で、

全編通してのしかかるダウナー感がすごくよかった。

背負いながら歩いていく少年たちのお話。

絵がとにかくうまくてきれいで、暗いんだけど乾いていて。

間違うと犯罪の正当化とも取られかねないのでけっこう危ない線をいってる内容だけれど、

読者に大きな問いを投げかける、重大な作品だと思った。

一括りにされたうえで生まれた人間像を、一定の基準で決めつけて

法律は定められているし世間は噂するし報道もおこなわれているけど、

そうじゃないこともあるよなと。人の気持ちって、そういうことじゃないよなと。

使い古された言葉だけど、読み手に傷を残す、そういう作品でした。

それから、半年に一回くらい、イタタタとなるために読み返していました。

 

そして先月。

BL好きな事務所の先輩に(就職しました)、

「これ、好きそうかなと思って」と渡された漫画、それが『よるとあさの歌』『よるとあさの歌 Ec』でした。

本当に……それがすごくよかった!!!!!

『にいちゃん』とは全然違うテンションだけど

キャラクター、心理表現、演出力、台詞、コマ割りカメラワーク、そしてなにより絵、ぜんぶすごくよかった。

『にいちゃん』と『よるあさ』両方読んではじめて、はらださんの表現の巧さに度肝抜かれました。

こう、なんというか、あわいを突くのがうまいというか。

言葉にならないことを、登場人物の表情で伝えるのがものすごく巧い。

そして人間の多層的なところを、丁寧に丁寧に露わにするから、読んでいて、自分の心の弱い部分をぎゅうぎゅう握られている感じがする。

身体的、精神的な暴力シーンが多くて、はらだファンが言うところの「かわいそうでかわいい」っていう見せ方が多く、辛い。痛い。でもそれがめちゃくちゃ癖になる。

 

そのあとまた事務所の先輩に『やたもも』を借りました。

やたももは、全体的に明るくかわいく、ストーリーもわりとシンプルなんだけれど

はらださんの作品はどれも読み返すほどじわじわくるのだよね。

1回目はサラッと、マイルドめねー、と思いながら読んだのだけれど、2回目読んだときにモモがかわいそうでかわいそうで(またでた、かわいそうかわいい)ほんとやたちゃんとのラストのラブシーン泣けた……

 

そして、先輩にご本をお返ししたあと、改めて全巻を購入。最近は暇さえあればはらだ作品を読んでいる。

ワンルームエンジェル』はあまりにも大きなお話で大事にしすぎて逆に繰り返し読めないし、

『カラーレシピ』もほんとお話がよくできてて唸っちゃう。ラストはビリビリきた。

はらださんの描く男の子の後ろ頭が好き。この感覚、誰かに共感してほしいなあ

 

某B術手帖がボーイズラブ特集をしたとき、私は「10年遅いなあ」と思ったけれど、あのときの特集のタイトルが「関係性の表現をひもとく」で、

それは本当にまさしくBLを語るのにぴったりの言葉だと今思う。

BLは、むきだしの、関係性の表現なんだ。

 

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